看護学生はストレスコーピングについて勉強する機会があります。
そこでよく挙げられるのが、アメリカの心理学者、リチャード・S・ラザルスのストレスコーピング理論です。しかし、ラザルスの文献を読んでも、書いている内容が非常に抽象的で難しいと思われた方もいたと思います。
そこで、今回はラザルスのストレスコーピング理論について、簡単にお話します。
ストレスコーピングとは?
ストレスコーピングとは、直訳するとストレス対処法です。
世の中には私たちがストレスに感じることが多く存在し、これらを刺激=ストレッサーといいます。
ラザルスは、人間が刺激に対してどのような評価し対処するのかという関係性をストレスと称しています。
多くの記事で「反応」や「ストレス反応」という言葉が使われていますが、ラザルスは「反応」という言葉を文献では使用していません。
では、実際に人間が刺激を受けて、どのように対処=コーピングにつなげていくか、ラザルスの理論についてお話ししていきましょう。
ラザルスの理論 刺激を受けてからコーピングまでの流れ
私たち人間は、何か嫌なことや苦痛なことが起きると、どのように捉えて、どのように対処しているでしょうか?
ラザルスの理論における、ストレスコーピングの大まかな流れは、刺激(ストレッサー)を受けて、「評価」→「対処=コーピング」→「対処の結果の評価」です。
評価
ストレッサーに対する評価は「一次的評価」と「二次的評価」に分かれます。
一次的評価は、「無関係」、「無害ー肯定的」、「ストレスフル」の3つに分類されています。
簡単に言うと、ストレッサーが自分にとって無害か有害かどうか判別するプロセスです。
例えば、店内に大きめのBGMが流れている時、
「音楽が心地よくて楽しい」と感じる人がいれば、
「うるさい店だな」と苦痛に感じる人もいます。
同じ音楽に対しても人によって、その感じ方が変わりますよね?
つまり主観的な評価によって苦痛を感じるかどうかが決まります。
二次的評価は、ストレッサーに対して、自分が打ち勝てるのか、それとも負けてしまうのかを推測するプロセスです。
例えば、学校の先生に宿題を与えられたとき、
「これぐらいの量であればなんとかできる」と思う人がいれば
「こんなにたくさんの宿題はバイトでとかで忙しいから無理」と負けてしまう人もいます。
このようにストレッサーへに対して、どのように対処したらよいかの考え方は異なります。
あと、大切なことは、一次的評価、二次的評価と命名されていますが、決して順番に評価を行っているわけではありません。これはラザルスも文献内で述べています。
評価に与える要因
ストレッサーを評価をするときは、自分の考え方や周囲の環境によって大きく影響を受けます。
1.自分自身の要因
ラザルスは、評価に影響を与える人的要因には2つあると述べています。
この2つを「コミットメント」「信念」と分けています。
コミットメント:元々の本人の考え、価値観、大切にしていること。
信念:ストレスをコントロールできているという実感。
2.状況による要因
新奇性、予測性、不確実性
その刺激が初めてか、予測できていたかでストレスは大きくもなり小さくもなる。
時間的要因
切迫しているか、どれくらい続いているか、時間が不確実であるか、タイミングなど。
このように、評価に影響を与える要因は、自分以外にも多く存在している。
対処(コーピング)
1.情動中心のコーピング
感情的な対処。対処法としては、刺激に対して注意をそらす、最小化、回避など、感情的な苦痛を軽減させている。
お酒を飲んで忘れる
スポーツなど他のことに打ち込み考えないようにする
2.問題中心のコーピング
直面しているストレッサー(問題や課題)そのものを解決しようとする方法。
コーピングの助けになるのも(原動力)
自身の健康、エネルギー
前向きな信念
コミュニケーション能力
自分を支えてくれる人
お金や物資
コーピングの評価
ラザルスは、これまでのようなストレッサーに対するコーピングが作用したかどうかは、3つの点で評価すると述べています。
その3つは「社会的機能」、「モラール」、「身体的健康」です。
社会的機能は、個人が自分自身の多様な役割を果たせているかどうかです。それは家族、会社、学校などあらゆる社会が含まれます。
モラールは、その人の意欲や自信のことです。
ちなみに、コーピング自体が身体的に悪影響を起こしうるプロセスもあります。
例えば、情動中心の対処としてアルコールやたばこは身体に悪影響を及ぼし、また、病気から目を背け続け治療が遅れることがあるかもしれません。
まとめ
ラザルスのストレスコーピング理論について、ものすごく簡単にお話ししました。
刺激を受けて、評価→対処→結果という流れです。
あくまでも文献的にお話ししたので、実際の生活でのコーピングへの応用は、現代社会ではラザルスの理論だけでは難しいと思います。
参考文献
リチャード・S・ラザルス.(1991).ストレスの心理学.実務教育出版