救急看護師が覚えておくべき虐待のサイン

救急看護師

近年、幼児虐待による凄惨なニュースを目にします。
厚生労働省の報告では、ほとんどの年で50人以上の虐待死が報告され、虐待通告件数も年々増加しています。
実際に救急外来にも虐待が疑われるような症例はあり、医療機関の中でも救急医療の現場は、虐待症例に最も遭遇する現場です。

年間の児童相談所への虐待通告数において、医療機関からの通告は数%程度しかありません。
多くは保育所や学校、近隣住民からの通告がほとんどです。

虐待をするような親が、子どもを病院に連れてくるなんて本当に少ないということです。

しかし、その少ない中で、虐待を示唆するようなサインを見逃さないことも、救急看護師の重要な役割の1つです。

今回は、診断ではなく、救急看護師がトリアージや診察時に注意すべき点についてお話します。

虐待の種類

虐待の種類は大きく4つに分類されます。

1.身体的虐待
2.心理的虐待
3.性的虐待
4.ネグレクト

心理的虐待にについては、直接的な言葉の暴力だけでなく、子どもの面前での親のDVや言い合い、非行、自傷行為など、子どもに精神的なストレスが大きくかかるであろうことすべて含みます。

虐待を疑うサイン

1.不自然な外傷、熱傷、タバコなどの誤飲症例
手の甲や背部、耳など転倒では受傷しにくい場所の外傷
臀部、大腿内側部、背部など露出が少ない部位の外傷、熱傷
新旧混在した外傷がある

2.子どもの外観、様子
成長障害(体重増加不良、低身長、やせ)
季節に合わない服装
不衛生(衣類の汚れ、髪・皮膚・爪の汚れ、体臭、口臭)
表情(活気がない、怯えている、親と分離しても平気、無表情)

3.保護者の様子
子どもへの接し方(子供が泣いていても無関心、異常に怒るなど)
受傷機転や病的が曖昧、不自然
受傷から病院受診までかなりの時間がかかっている
医療者への対応(攻撃的、クレーマー、看護師の話を聞いていない)

必ず全身を観察しましょう。
親の説明が曖昧であったり、不自然であったりしても否定せず一旦は受け入れましょう。

虐待を疑うサインを見つけたら

上記のような虐待を疑うようなサインを見つけたときは、まずは必ず医師や他の看護師と共有しましょう。受付やトリアージでのその気付きを共有することで、医師の診察の手助けとなり、チームとして対応することができます。
一人の考えだけで行動しないことが大切です。

子どもへ問診する際は、何があったのか、どこが痛むのかなど事実のみを確認しましょう。
なぜ?という質問や誘導的な質問はしないこと。

正確にありのままをカルテに記載しましょう。
「虐待」という言葉は使用しない。
子どもや親の言葉を言い換えず、そのまま記載する。
救急外来で不振に感じた様子や態度についても、具体的な行動など見たままを記載する。
自分の判断を記載しない。
医師の診察に同席した場合は、外傷の写真を残す。

その後の対応

明らかに虐待を疑う症例は入院させ保護する必要があります。
多くの病院は虐待症例のフローチャートなどを作成しているはずなので、必ず確認しておきましょう。

通告義務について
病院、学校、児童福祉施設などの団体、および医師、保健師など、児童の福祉に職務上関係のあるものは、子どもの虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、子どもの虐待の早期発見に努めなければならない」・・・児童虐待の防止に関する法律 第5条第1項

「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して、市町村、都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所に通告しなければならない」・・・児童虐待の防止に関する法律 第6条第1項

ただし、通告によって、医療関係者が刑法上の守秘義務に問われることはない。・・・児童虐待の防止に関する法律 第7条

まとめ

一番大切なことは子どもの命です。

病院という公的な機関が介入することで、子どもの保護や地域の見守り強化につなげることができます。

救急の看護師として大切なことは、どんな外傷や熱傷でも虐待は必ず考えながら対応する。
もちろん多くの親は心配をして連れてきているので、あくまでもフラットな目線や態度で。
一人では対応せず、必ずチームで対応する。

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